023とキーボードと朝太郎と、

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キーボードのことなど

キースイッチをソケット化する

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Mill-Max ソケットを装着した基板

キーボードのソケット化

キーボード界隈でソケット化と言うと、基本はスイッチのソケット化のことを指すように思われる。

他には Pro Micro もソケット化可能なパーツの一つだが、ここでは、スイッチのソケット化を取り上げる。

tl;dr

  • ソケット化には Mill-Max ソケットを用いる
  • 基板が対応しているなら Kailh Hotswap ソケットを使う

ソケット化の利点

ソケット化の目的、それは、はんだ付けすることなくパーツ交換を可能にすること、これに尽きる。 ソケット化することで、スイッチ交換が非常に楽になるので、色んなスイッチを試してみたくなる。

というわけで、スイッチのソケット化の一番の利点は、色々なスイッチを簡単に試せることであると思う。

ソケット化のあまりよくないところ

スイッチ交換が楽になるソケット化だが、以下に挙げる様な「あまり嬉しくない点」もある。

  • キーキャップ交換時にスイッチが取れてしまう*1
  • PCB マウントだとスイッチの安定性に欠ける
  • 余計なコストが掛かる
  • タイピング音にも影響がある (気がするだけかもしれないが)
  • (Mill-Max を使った場合) ソケットの頭分 (約0.8mm) だけスイッチの高さが高くなる

スイッチのソケット化に使用するパーツ

Holtite ソケット

スイッチのソケット化には、ソケット (レセプタクル) と呼ばれる部品を用いる。通常これを基板のスイッチ用の穴にはんだ付けなどして、ソケットにキースイッチの脚を挿入するとソケットがはんだの役割を果たして、スイッチと基板を繋いでくれる。

スイッチのソケット化といえば、2017年頃は TE Connectivity 社の Holtite socket が主流だったと記憶している。 だが、この Holtite ソケットは、基板によってサイズが合わず抜け落ちたり、しっかりはまらないものがある、また、ソケット下部にスリットがあるため、はんだ付けする際に、はんだがソケット内部に流入してしまうといった難点があった。

Kailh hot-swap ソケット

中国 Kaihua が製造している、Mechanical Keyboard Switches Kailh PCB Socket というキーボードスイッチ専用のソケットがある。 キースイッチ専用のためぴったりハマるのが良いが、基板がこのソケットに対応している必要がある。 Planck Rev.6, Preonic Rev.3 などは最初からこのソケットが実装されているため、はんだ付け一切無しにスイッチをはめ込むだけでキーボードが完成する。

Mill-Max ソケット

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Mill-Max 0305-2-15-80-47-80-10-0

Holtite ソケットの上記のような問題点を見聞きしていたので、なかなかソケット化に踏み出せなかったが、 Mill-Max 0305-2-15-80-47-80-10-0 というソケットの存在を知った。*2

これは、スーパーマリオの土管の様な形状をしているため、少なくともソケットが基板から抜け落ちることはない。(が、基板によっては、穴がきつくて入らない可能性はあるかも。)*3

このソケットという代物がなかなか高価で、ロットにもよるが、1つ40円~20円程度する。 スイッチ1つにつき脚が2本あるので、2x キー数となり、例えば Planck (47キー) をソケット化するには、2x47 = 94本で、2,000円弱かかる。

素材

Mill-Max 0305-2-15 のみならず、前述の Holtite ソケットも同様だが、ソケット内部の接点にはベリリウムと銅の合金である、ベリリウム銅が用いられている。

実装方法

実装方法は簡単で、ソケットを基板のスイッチが入る穴にはんだ付けするだけ。 一応ちょっと詳しい手順。

  • スイッチの脚にソケットを装着
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    ソケットをスイッチの脚に装着した様子
  • スイッチをソケットごと基板に装着
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    基板にソケットを挿入した様子
  • ソケットをはんだ付け これをスイッチ数分やれば完了。

Mill-Max 0305-2-15 Tips

実装自体は簡単なのだが、プレート越しにスイッチを付けるのに最初ちょっと戸惑ったのでメモ。 観測範囲だと、 Kailh speed switch、 Kailh Box switch は装着が容易。 Gateron は、薄い方の脚の幅が Kailh のそれより僅かに広い *4 ため、真上からソケットに挿入しようとするとうまく入らない。(脚が曲がってしまう) なので少し斜めから入れるようにすると入り易い。 とは言ったものの、言葉で表現するのはなかなか難しいので、色々試して入り易い角度を見つけるしかないと思う。

雑感

私は、色々なスイッチを試してみたくなる性格なので、最近作ったボードはほぼソケット化している。 だが、スイッチなんてそんなに頻繁に変えない、新しいスイッチが試したくなったらそれ用に1台作るという人はソケット化は必要ない。

*1:これは薄いアクリルプレートを使用している場合に顕著。

*2:到底記憶不可能な型番だが、サイズ違いなどで同じような製品が複数あるので、購入の際は注意されたい。

*3:試した範囲だと、 Let's Split Eh?, Boardwalk, ErgoTravel, Iris rev 2.x は問題無し。

*4:実測で0.02-0.03mm