メカニカルキーボードのタイピング音を静音化する
タイピング音うるさい問題
メカニカルキーボードに限ったことではないけれど、家や (特に静かな) オフィスでは、タイピング音うるさい問題が発生することがある。 ここでは、俗にいう「カタカタッターン」のようなハードタイパーへの対策というより、メカニカルキーボードの「カチャカチャ」をいかに低減するかをメインに取り扱う。
tl;dr
- タイピング時のカチャカチャを減らす方法について解説
- 最も静かなのは静音軸 (サイレントスイッチ)
- O-ring は手軽かつ安価だがキーキャップを選ぶ
- QMX-Clip は効果大だがスイッチを選ぶ
- 個人的にはルーブで十分 (特にリニア軸)
カチャカチャ音の原因
カチャカチャ音の出どころは大きく分けて2つあり、一つはキーキャップとスイッチ上蓋の接触、もう一つはスイッチ内部品の接触である。 スイッチ内部での接触は、基本的に稼働部品であるステムとハウジングの接触によるもの。
ケース
カチャカチャ音はスイッチ、キーキャップから発生することは上で述べたが、同じスイッチ、キーキャップの組み合わせでも、キーボードケースの構造や素材も音に影響する。 アクリルよりもアルミなどの重たいケースの方が高音が低減される気がする。また、サンドイッチケースよりも、ボトムケースの上部にプレートを乗っけるタイプ (トップマウント?) の方が音が静かな気がする。
キーキャップ
容積の小さな DSA, Cherry よりも、容積の大きな SA の方がより低いこもったような音になる。
静音化の方法
静音化する方法はいくつかあり、それぞれ効果も違うし、また、(個人差こそあれ) デメリットもある。
サイレントスイッチ
所謂、静音軸と呼ばれるタイプのスイッチ。キーを押し下げた時、キーが戻る時にステムがスイッチのハウジングに接触して発生する音を低減する仕組みが搭載されている。 仕組みといっても、ステムに小さなシリコンが付いており、それがプラスチック同士の接触音を低減しているというシンプルなもの。
効果
仕組みは単純だが、その効果は大きくカチャカチャがほぼ聞こえないレベルまで静音化される。
デメリット / 副作用
- キータッチがゴムっぽい ステムの接触部がシリコンに替わることで、独特の「グニャ」っとしたゴム感が出る。この感触をデメリットととるかは、個人差が大きいものと思われる。
- 選択肢が少ない どんなスイッチにもこの静音仕様があるわけではなく、バリエーションが少ない。 例えば、 Gateron なら赤、黒、茶 (2018年あたりに白も追加された模様)、 Cherry なら赤、黒といった具合。 2019年2月現在、 Kailh BOX の静音軸はまだない模様。
- 通常のスイッチより高価
QMX-Clip
GMK 謹製の静音化パーツ。 シリコンが付いたカバーで、スイッチ全体を覆うタイプのパーツで、 PCB マウント版とプレートマウント版がある。 静音ポイントは、キー戻り時のステムとハウジングの接触、キーキャップとスイッチの接触部分である。
効果
カチャカチャ音はほぼしなくなり、効果は結構大きい。ただ、このクリップ特有の「キュッキュッ」というような音がする気がする。
デメリット / 副作用
- 取り付けが面倒。 スイッチ一つ一つに装着する必要があるためちょっと面倒。
- 本来 Cherry MX 用のため、Kailh スイッチは上蓋の構造上装着できない。 クリップの爪が、ハウジング横に咬まない構造の上蓋は NG。
- ストロークが短くなる。 これは好みもある。
- 入手性が悪い。 日本国内での取り扱いは2019年2月現在なさそう。
O-ring
キーキャップのステムに装着して、キーキャップとスイッチの接触音を低減する。 リングの厚みでいくつかバリエーションがある模様。
効果
- キーキャップとスイッチの接触音はしなくなる。
- 安価かつ、日本国内での入手性も良い。(Tsukumo とかでも購入可能。)
デメリット / 副作用
- 独特のゴム感
- ストロークが短くなる
- 仕組み上、軸が長い SA は効果薄
Lube (ルーブ)
本来は静音化というより、キータッチを滑らかにする方法。キースイッチ内部の接触箇所に潤滑油、または、グリスを塗布する。
効果
潤滑油によってキースイッチ内部の接触箇所の稼働が滑らかになり、スレ感やカチャカチャが低減される。 高音の耳障りなカチャカチャ音が、「コトコト」に変化して、非常に心地の良いタイピングサウンドになる。(個人の感想)
個人差はあるものの、耳障りな高音が除去されるだけでも不快感は大幅に低減される。また、ルーブ本来の目的である滑らかなキータッチも同時に手に入る。 個人的には、ルーブによる静音効果で十分と思っている。
デメリット / 副作用
- スイッチを一つ一つ分解してルーブする作業が面倒
- 既製品のメカニカルキーボードはプレートからスイッチを外さないとハウジングが開けられないものが多い
- ルーブの国内での入手性があまりよくない (基本は海外通販)
- タクタイル軸はタクタイル感が弱まる場合がある
結論
- 労力をかけずお金で解決 => 静音軸
- お金を掛けたくない => O-ring
- O-ring で解決しないキー戻り時の接触音も解消したい => QMX-clip
- 労力を掛けて、滑らかな打鍵感も実現したい & 超静音でなくても OK => ルーブ